2026年8月24日公開 / RentGo編集部

レンタカーの貸渡証とは|記載事項7項目・交付方法・保管期間を公示の原文で整理

レンタカー店舗のカウンターで、貸渡証の書面と運転免許証を並べて記載内容を確認しているイメージ

貸渡証は、レンタカーの貸出のたびに借受人へ渡す書面です。慣習として渡しているのではなく、レンタカー許可に付される条件として交付が義務づけられており、記載しなければならない項目まで運輸支局の公示に列挙されています。ところが実務では、貸渡簿との違いが曖昧なまま「保管期間は2年」と覚えられていたり、市販のひな形を使い続けて遵守事項の一文が抜けていたりします。本記事では、貸渡証の記載事項7項目と遵守事項の文面、交付と携行の方法、そして保存義務がどちらにかかるのかを、公示の原文にもとづいて整理します。

1. 貸渡証とは何か、根拠はどこにあるのか

貸渡証は、レンタカー事業者が貸出のたびに借受人へ交付し、運転者に携行させる書面です。法律の条文に「貸渡証」という言葉が直接書かれているわけではありません。根拠は、道路運送法第80条第1項および同法施行規則第52条にもとづいて各運輸支局が公表している公示の中の、許可に付される条件です。

北陸信越運輸局富山運輸支局の公示(富運支公示第1号、令和4年6月1日)は、許可に対する条件として次のように定めています。レンタカー型カーシェアリングの場合を除き、借受人には、別記2の事項を記載した貸渡証を書面(電子メール等の電磁的方法を含む)により交付し、貸渡自動車の運転者にこれを携行(電磁的記録による携行を含む)するように指示しなければならない、というものです。

つまり貸渡証は、任意の顧客向け書面ではなく、許可の条件そのものです。同じ公示は、貸渡人が道路運送法・貨物自動車運送事業法・道路運送車両法および許可条件に違反したときは、貸渡自動車の使用を禁止し、または許可を取り消すことがあるとも定めています。渡していない、あるいは記載事項が欠けている状態は、許可条件違反として扱われる余地があるということです。

許可そのものの取り方と、許可に付される条件の全体像は レンタカー許可の取り方 で整理しています。本記事はそのうち、貸渡証の1点を掘り下げるものです。

2. 貸渡証・貸渡簿・貸渡原票の違い

実務でいちばん混乱するのがここです。3つは似た内容を持ちますが、役割も義務のかかり方も違います。

  • 貸渡証: 借受人に交付し、運転者に携行させる書面。記載事項は公示の別記2
  • 貸渡簿: 事業者が備え、貸渡しの状況を記録する帳簿。記載事項は別記1で、貸渡しの終了日から2年間の保存義務がある
  • 貸渡原票: 1件ごとの貸渡し記録の控え。別記1は、貸渡原票を綴ったものによって貸渡簿に代えることができると定めている

記載事項を並べると、共通部分と固有部分がはっきりします。借受人の氏名または名称および住所、運転者の氏名・住所・運転免許の種類・運転免許証の番号、貸渡自動車の登録番号または車両番号、貸渡日時および時間、貸渡事務所と返還事務所。ここまでは貸渡証と貸渡簿で共通です。

貸渡簿だけにあるのが、走行キロ数、貸渡料金、事故に関する事項の3つです(自家用マイクロバスを貸し渡す場合は、運行区間または行先・利用者人数・使用目的も加わります)。走行キロと料金は返却時に確定する情報なので、貸出時に渡す貸渡証には入れようがない、と考えると整理しやすいと思います。

逆に貸渡証だけにあるのが、貸渡人の氏名または名称および住所と、遵守事項です。これは借受人が持ち歩く書面だからです。誰から借りたどの車で、何かあったらどこに連絡するのかが、その紙だけで分かる必要があります。

3. 貸渡証に記載する7項目

公示の別記2は、貸渡証の記載事項をアからキまでの7つに整理しています。

  • ア: 借受人の氏名または名称および住所
  • イ: 運転者の氏名、住所、運転免許の種類および運転免許証の番号
  • ウ: 貸渡自動車の登録番号または車両番号
  • エ: 貸渡日時および時間
  • オ: 貸渡事務所、返還事務所
  • カ: 貸渡人の氏名または名称および住所
  • キ: 次の遵守事項

7つ目のキは、単なる項目名ではなく、4つの文面を入れることを求めています。ここが市販のひな形でいちばん欠けやすい部分です。

  • (ア)運行中必ず携帯し、警察官または地方運輸局もしくは運輸支局の職員の請求があったときは、呈示しなければならない旨
  • (イ)自動車の借受けに付随して、貸渡人から運転者の労務供給(運転者の紹介および斡旋を含む)を受けることができない旨
  • (ウ)貸渡自動車に係る事故および故障等が発生した場合の処置(処置方法、連絡先等)に関する記載
  • (エ)貸渡期間が2日以上となる場合には、日常点検を借受人が実施することとなる旨

(イ)は、レンタカーが運送事業の類似行為に流れることを防ぐための一文です。運転手付きで貸すことはできない、という原則を借受人にも明示させています。(ウ)は連絡先を書く欄が必要になるため、店舗の電話番号を差し込める様式にしておきます。

(エ)は長期貸出で効いてきます。2日以上の貸渡しでは日常点検の実施主体が借受人に移ることを、書面で伝えておかなければなりません。整備側の義務との関係は レンタカーの整備管理と法定点検の実務 で扱っています。なお、内閣府沖縄総合事務局の公示では(ア)が「運転中必ず携帯し」、請求主体が沖縄総合事務局もしくは陸運事務所の職員となっており、支局によって語句が少し異なります。文面は管轄支局の公示に合わせてください。

4. 交付の方法と、運転者への携行のさせ方

交付は「書面(電子メール等の電磁的方法を含む。)により」と定められています。紙で手渡す方法に限定されていません。PDFを作成してメールで送る形でも、条件を満たします。

携行のさせ方も同様で、「携行(電磁的記録による携行を含む。)するように指示しなければならない」と書かれています。運転者がスマートフォンで貸渡証を提示できる状態にしてあれば、紙をダッシュボードに入れておく必要はありません。事業者側の義務は、携行するよう指示することです。

例外はレンタカー型カーシェアリングです。会員制により特定の借受人に対して自家用自動車を業として貸し渡す形態については、貸渡証の交付義務の対象から外れています。無人で貸し出す形態を、紙の受け渡しを前提とした条件で縛らないための整理です。逆にいえば、通常のレンタカーとして貸し出す限りは、無人受渡しであっても交付が必要になります。

なお、貸渡料金と貸渡約款の明示は貸渡証とは別の義務です。こちらは事務所での掲示、ウェブサイトへの掲載、書面の掲示のいずれかで借受人に明示することとされています。貸渡証に料金を書いたから約款の明示は済んだ、とはなりません。

5. テンプレートを自作するときに抜けやすい項目

貸渡証に全国統一の法定様式はありません。別記2の記載事項を満たしていれば、自社で作った書式で構いません。エクセルやワードで作る事業者が多いのはそのためです。ただし、実際に見かける自作様式には決まった抜けがあります。

  • 運転者欄が1名分しかない: 追加ドライバーを受けた時点で記載漏れになります。免許の種類と免許証番号まで、人数分を書ける設計にします
  • 遵守事項が3つしかない: とくに(エ)の日常点検の一文は、長期貸出をしない前提で作られたひな形から落ちがちです
  • 貸渡人の住所がない: 店名と電話番号だけを入れて、カの住所が抜けているパターンです
  • 返還事務所の欄がない: 乗り捨てを扱わない店舗ほど、貸渡事務所と兼用にして省略してしまいがちです
  • 連絡先が代表番号のみ: (ウ)は事故・故障時の処置方法と連絡先です。夜間・休日につながる先を書けているかを確認します

作ったあとの点検は、公示の別記2を横に置いてアからキまでを1つずつ突き合わせるのが確実です。テンプレートは一度作ると数年そのまま使われるので、公示が改正されたときに追随できているかも合わせて見てください。富山運輸支局の公示は令和4年6月1日から適用され、それ以前の令和元年7月8日付け公示第1号は令和4年5月31日限りで廃止されています。

運転免許証の情報を書き写す以上、貸渡証は個人情報を含む書面です。控えを店舗に置く場合の保管場所と、破棄のルールも決めておくと安全です。

6. 保管期間は貸渡証ではなく貸渡簿にかかる

「貸渡証は2年保管」と説明されることがありますが、公示を読むと保存期間が定められているのは貸渡簿です。該当箇所は、別記1の事項を記載する貸渡簿を書面または電磁的記録により備え、貸渡しの状況を適確に記録するとともに、貸渡しの終了日から2年間保存しなければならない、という条件です。

一方、貸渡証については交付と携行の指示までが条件で、事業者側の保存年限は置かれていません。借受人に渡す書面なので、当然といえば当然です。それでも「貸渡証を2年保管」という理解が広まっているのは、複写式の用紙で貸渡証と貸渡原票を同時に作り、控えを綴って貸渡簿の代わりにする運用が定着しているからだと思われます。この場合、2年保存の対象になっているのは控え、つまり貸渡簿に代わる貸渡原票のほうです。

区別が実務に効くのは、電子化を進めるときです。公示は貸渡簿を電磁的記録により備えることを認めています。紙のバインダーで綴じる義務はなく、システム上の記録でも要件を満たせます。ただし別記1の項目、とくに走行キロ数・貸渡料金・事故に関する事項まで記録できているかは確認が必要です。予約データだけを持っていて、返却時のメーター値を残していないシステムでは、貸渡簿として不足します。

保存した記録は、毎年5月31日までに提出する貸渡実績報告書の集計元にもなります。延貸渡回数・延貸渡日車数・延走行キロ・総貸渡料金といった報告値は、日々の貸渡し記録の合計です。書き方は 貸渡実績報告書の書き方と提出実務 にまとめています。

7. 貸渡証の発行を、貸出フローの中に置く

貸渡証は1件ごとに必ず発生します。台数が少ないうちは手書きの複写式でも回りますが、繁忙期に受付が詰まると、記入が雑になったり、追加ドライバーの欄が空のまま渡されたりします。記載漏れは、監査で指摘されるまで気づけない種類のミスです。

仕組みで防ぐなら、貸渡証を独立した作業にせず、貸出処理の一部にしてしまうのが確実です。予約に紐づく借受人・運転者・車両・日時のデータがすでに入っているなら、貸渡証の項目のうち5つはその時点で埋まっています。残るのは貸渡人の情報と遵守事項で、これは店舗設定から毎回同じものを差し込めます。

RentGoでは、貸出処理を行った予約から貸渡証を発行できます。証面には別記2のアからキまでの項目と遵守事項4項目が入り、店舗の電話番号は(ウ)の連絡先に差し込まれます。印刷して手渡すことも、PDFにして借受人へメールで送ることもできます。貸渡簿は年度を指定してCSVで出力でき、貸渡実績報告書(様式1・様式2)はExcelで出力できます。帳票のために別の台帳を作り直す必要はありません。

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8. よくある質問

貸渡証と貸渡簿は何が違いますか。

貸渡証は借受人に交付して運転者に携行させる書面、貸渡簿は事業者が備えて貸渡しの状況を記録する帳簿です。借受人・運転者・登録番号・貸渡日時・貸渡事務所と返還事務所までは共通で、貸渡簿には走行キロ数・貸渡料金・事故に関する事項が、貸渡証には貸渡人の氏名と住所および遵守事項が固有の項目として加わります。

貸渡証に保管期間はありますか。

公示で保存期間が定められているのは貸渡簿で、貸渡しの終了日から2年間です。貸渡証は借受人に交付するものであり、事業者側の保存年限は置かれていません。ただし貸渡原票を綴ったもので貸渡簿に代えることが認められているため、複写式で控えを残す運用では、その控えが2年保存の対象になります。

貸渡証は紙でなければいけませんか。

公示は書面(電子メール等の電磁的方法を含む)による交付を認めており、運転者の携行についても電磁的記録による携行を含むとしています。PDFをメールで送り、スマートフォンで提示できる状態にしておく運用も認められます。

貸渡証を交付しなかった場合はどうなりますか。

貸渡証の交付は許可に付される条件のひとつです。公示は、貸渡人が道路運送法・貨物自動車運送事業法・道路運送車両法および許可条件に違反したときは、貸渡自動車の使用を禁止し、または許可を取り消すことがあると定めています。

運転者が複数いる場合はどう書きますか。

記載事項は運転者の氏名・住所・運転免許の種類・運転免許証の番号です。追加ドライバーも運転する以上は運転者にあたるため、人数分を記載できる様式にしておきます。1名分の欄しかないテンプレートは、追加ドライバーを受けた時点で記載漏れになります。

貸渡証に決まった様式はありますか。

全国統一の法定様式はありません。公示の別記2に挙げられた記載事項を満たしていれば、自社で作成した書式で構いません。ただし記載事項と遵守事項の文言は管轄運輸支局の公示に合わせてください。

9. まとめ

貸渡証は、レンタカー許可に付される条件として交付が義務づけられた書面です。記載事項は公示の別記2にアからキまでの7つが列挙されており、7つ目の遵守事項は、運行中の携帯と呈示、運転者の労務供給を受けられないこと、事故・故障時の処置と連絡先、貸渡期間が2日以上の場合の日常点検という4つの文面を求めています。

交付も携行も電子で構いません。公示は電子メール等の電磁的方法による交付と、電磁的記録による携行を明記しています。紙にこだわる理由はないので、貸出フローに合う形を選んでください。

保管期間については、2年の保存義務がかかるのは貸渡簿であって貸渡証ではない、という区別を押さえておくのが要点です。複写式で控えを残す運用なら、その控えが貸渡簿の代わりとして2年保存の対象になります。貸渡証・貸渡簿・貸渡実績報告書は、どれも同じ1件の貸渡し記録から生まれるものなので、記録をどこに残すかを先に決めておくと、あとの手戻りがなくなります。

本記事は2026年8月時点で公開されている道路運送法第80条第1項および道路運送法施行規則第52条、北陸信越運輸局富山運輸支局公示第1号「貸渡人を自動車の使用者として行う自家用自動車の貸渡し(レンタカー)の取扱いについて」(令和4年6月1日)、内閣府沖縄総合事務局公示第6号「自家用自動車有償貸渡し(レンタカー)を業とする者の取扱い基準について」(令和4年6月2日一部改正)、中部運輸局「レンタカー事業を経営する方へ」をもとに構成しています。許可条件の文言・別記の記載事項は運輸局および運輸支局によって異なる場合があり、改正されることもあります。実際の様式作成にあたっては、管轄の運輸支局が公表する最新の公示をご確認ください。