2026年8月17日公開 / RentGo編集部
レンタカーの整備管理と法定点検の実務|整備管理者は10台から、乗用車は6ヶ月ごとの点検

レンタカーの車両は、同じ車種のマイカーより点検の間隔が短く、台数が増えると整備管理者の選任義務がかかります。ところが開業時の関心は許可・保険・車両の調達に向きがちで、整備の体制は「10台目を買ってから考える」になりやすい領域です。本記事では、整備管理者が必要になる台数と資格要件、レンタカーの定期点検の区分、記録の保存、外部委託の可否を、国土交通省と運輸支局の一次情報にもとづいて整理します。
1. レンタカー事業者に課される整備の義務
点検整備は、そもそも自動車の使用者の義務です。国土交通省も「点検整備の実施はユーザーの義務として法令でも規定されています」として道路運送車両法第47条を挙げています。レンタカー事業者は、貸し出す車両すべての使用者にあたります。借りた人が壊したかどうかにかかわらず、車を良好な状態に保つ責任は事業者側にあるということです。
レンタカーの場合、これに許可条件が重なります。近畿運輸局滋賀運輸支局が公示している自家用自動車の有償貸渡しの許可の基準(令和4年6月1日施行)では、許可に付される条件として、貸渡自動車がその配置事務所にあるかどうかにかかわらず、配置事務所の従業員等が貸渡し状況および整備状況等の車両の状況を把握し、適切な管理を実施しなければならないと定められています。IT等の活用により本社等で車両の状況を把握している場合も、この把握に含まれるとされています。
同じ公示では、これらの条件に違反したときは貸渡自動車の使用を禁止し、または許可を取り消すことがあるとされています。点検の実施漏れが単なる車両トラブルにとどまらず、事業の継続に直結する理由がここにあります。
なお許可申請の段階でも、添付する貸渡しの実施計画に整備管理者(整備責任者)の配置計画等を書く欄があります。台数がまだ少なく選任義務がない場合でも、誰が車両の状態を見るのかは開業時点で決めておく前提だということです。開業手続き全体の流れは レンタカー開業に必要なものと手続きの流れ にまとめています。
2. 整備管理者はいつ必要になるか(選任基準・資格・届出)
2-1. 選任が必要になる台数
整備管理者の選任は、事業者単位ではなく使用の本拠ごとに判定します。レンタカーの区分は次のとおりです。
- バス(乗車定員11人以上): 1台以上
- 大型トラック等(車両総重量8トン以上): 5台以上
- その他の自動車: 10台以上
乗用車だけで運営している事業者にとっては、10台目が判定ラインです。ここで見落としやすいのが「使用の本拠ごと」という単位です。2拠点で6台ずつ、合計12台を運用している場合、拠点ごとに見れば6台なので選任義務は生じません。逆に、1拠点に集約して12台にした瞬間に義務が発生します。拠点の統廃合は整備管理者の要否を動かすということです。
2-2. 資格要件
整備管理者になれるのは、次のいずれかに該当する人です。
- 整備の管理を行おうとする自動車と同種類の自動車について、点検もしくは整備または整備の管理に関して2年以上の実務経験があり、かつ地方運輸局長が行う整備管理者選任前研修を修了した人
- 一級、二級または三級の自動車整備士技能検定に合格した人(この場合、選任前研修の修了は必要ありません)
ここでいう同種類の自動車とは、二輪自動車以外の自動車と二輪自動車の2種類の区分を指します。乗用車もマイクロバスも貨物車も、同じ「二輪自動車以外」に入ります。実務経験には、整備工場等で工員として作業した経験のほか、技術上の指導監督的な業務の経験や、整備管理者の補助者として車両管理業務を行った経験も含まれます。整備士資格がなくても、車両管理を長く担当してきた人であれば要件を満たす場合があるということです。
2-3. 届出の期限と書類
選任した日から15日以内に、管轄する運輸支局へ届け出ます。届出書のほかに、資格要件を証する書面(実務経験経歴証明書と選任前研修修了証明書の写し、または整備士技能検定合格証書の写し)と同意書、整備管理規程の提示、過去2年間に解任命令を発令されていない旨を記載した書面が必要です。
届出が必要なのは選任時だけではありません。人事異動で担当者が変わったとき、事務所の名称や位置が変わったときなどは15日以内に変更届、選任を必要としなくなったときは30日以内に廃止届を出します。車両数の増減そのものに届出は不要ですが、減車して選任基準の台数を下回った場合は廃止届が必要です。10台を割ったのに届け出ていない状態は、書類上の不整合として残ります。
3. 定期点検と日常点検の実施範囲
3-1. レンタカーの乗用車は6ヶ月ごと
定期点検の間隔は車の使われ方で決まります。国土交通省の点検整備の案内では、次のように区分されています。
- 自家用乗用車・軽自動車(マイカー): 1年ごと29項目、2年ごと60項目
- レンタカー(乗用車)、自家用の中小型トラック: 6ヶ月ごと24項目、12ヶ月ごと86項目
- レンタカー(乗用車以外)、事業用のバス・トラック・タクシー、自家用の大型トラック: 3ヶ月ごと51項目、12ヶ月ごと101項目
同じ車でも、わナンバーを付けて貸し出した瞬間に点検の頻度は倍になります。マイカー感覚で年1回だけ整備工場に持ち込む運用のままだと、6ヶ月点検が抜け落ちます。貨物車やマイクロバスを扱う場合はさらに短く、3ヶ月ごとです。車種構成を広げるときは、点検コストが台数だけでなく区分でも変わることを見込んでおく必要があります。車両を増やす前提の話は 中古車を仕入れて貸し出すまでの実務 でも触れています。
3-2. 日常点検は誰がやるのか
定期点検とは別に、日常点検があります。レンタカーで独特なのは、貸出中の扱いです。前掲の滋賀運輸支局の公示では、借受人に交付する貸渡証の記載事項として、貸渡期間が2日以上となる場合には日常点検を借受人が実施することとなる旨を記載することが挙げられています。
つまり、2日以上の貸渡しでは日常点検の実施主体が借受人に移ることを、書面で伝えておく必要があります。貸渡証のひな形を作ったきり見直していない場合は、この一文が入っているかを確認してください。長期貸出を増やす場合はとくに、返却時の点検で異常を拾う設計と合わせて考えることになります。
4. 自社整備と外部委託の判断基準
4-1. 整備管理者そのものを外部委託する
社内に資格要件を満たす人がいない場合、整備管理者を外部に委託する方法があります。レンタカーは自家用自動車なので、この委託が認められています。届出の際は、通常の資格を証する書面等に加えて、委託先の同意書と委託契約書の写しが必要です。緑ナンバーの事業用自動車では整備管理者の外部委託は原則として認められておらず、ここはレンタカー事業の利点といえます。
現実的な委託先は、日頃から点検を依頼している整備工場です。10台目が見えてきた段階で、選任前研修の日程を調べて社内で人を作るのか、委託を打診するのかを比較しておくと、増車のタイミングで慌てずに済みます。選任前研修は運輸支局ごとに実施日が決まっており、思い立ってすぐ受けられるものではありません。
なお、選任後に定期的な受講が求められる整備管理者選任後研修は、自動車運送事業者が選任した整備管理者を対象とし、おおむね2年に1度の受講とされています。自家用自動車のみを管理する整備管理者を対象に含めるかどうかは運輸局・運輸支局の案内によって扱いが分かれるため、選任したら管轄支局の案内を確認してください。
4-2. 整備作業をどこまで自社で持つか
作業そのものの内製化は、また別の判断です。ブレーキの分解などの特定整備を業として請け負うには、地方運輸局長の認証(道路運送車両法第78条)が必要です。この認証は、他人の車の特定整備を事業として経営する場合の要件であり、自社の車両を自社で整備する行為を直ちに禁じるものではありません。ただし設備・技術・記録のすべてを自前で持つ必要があり、台数が数十台に届かない規模で採算が合うケースは多くありません。
現実的な線引きは、洗車・給油・タイヤの空気圧や灯火の確認といった日々の管理は自社、定期点検と整備は認証を受けた工場、というものです。委託先を選ぶときは、料金だけでなく、点検整備記録簿を確実に返してくれるか、繁忙期に代車や優先枠を確保できるかを見ておくと運用が安定します。
5. 記録の保存と貸渡実績報告との関係
点検を実施したら、点検整備記録簿に結果を記録して車両に備え付けます。国土交通省の案内では、保存期間は3ヶ月点検・6ヶ月点検の対象車が1年、1年ごとの点検が対象の車は2年とされています。レンタカーの乗用車は6ヶ月点検の対象なので1年が目安です。
レンタカー事業ではこれに加えて、許可条件として貸渡簿の保存があります。滋賀運輸支局の公示では、借受人・運転者・車両の登録番号・貸渡日時・走行キロ数・貸渡料金・事故に関する事項などを記載した貸渡簿を書面または電磁的記録で備え、貸渡しの終了日から2年以上保存することとされています。電磁的記録が明文で認められているため、紙のバインダーで保管する義務はありません。
整備の記録と貸渡の記録は、監査の場では一続きのものとして見られます。走行キロが記録されていれば、点検の実施間隔が実態に合っているかも説明できます。毎年5月31日までの 貸渡実績報告書 も同じ記録から作るものなので、日々の記録の付け方を決めておくことが、結局いちばん効きます。
6. 故障・事故が起きたときの代車と顧客対応
点検で防げるのは、予見できる不具合までです。貸出中の故障や事故は、どれだけ整備しても一定の確率で起きます。差が出るのは、そのあとの復旧の速さです。
決めておくのは3点です。第一に、連絡先と一次対応の手順を貸渡証や車内の書面に明記すること。前掲の公示でも、貸渡証の記載事項に事故および故障等が発生した場合の処置(処置方法、連絡先等)が挙げられています。第二に、代車をどう用意するか。自社の在庫を1台空けておくのか、提携工場の代車を使うのか、保険の特約で賄うのかで、費用も手配時間も変わります。第三に、その車に入っていた後続の予約をどう振り替えるか。1台が長期離脱すると、影響は当日ではなく数週間先まで及びます。
保険と補償の設計は レンタカー保険の選び方 に整理しています。休車損害をどこまで見込むかは、保有台数と稼働率で判断が変わる部分です。
7. 点検・車検の予定を予約とぶつけない
整備の運用で現場が一番困るのは、法令の解釈ではありません。点検の予約を入れた日に、その車の貸出予約が入ってしまうことです。6ヶ月ごとの点検に加えてレンタカーの乗用車は車検も自家用より短い間隔で回ってくるため、車を工場に出す日は年に何度も発生します。台帳が予約だけを管理していると、入庫予定は誰かの頭の中か、別のカレンダーに置かれたままになります。
RentGoでは、ガントチャート上で車両ブロックとして入庫予定を登録できます。種別は車検・点検・修理・回送・その他から選び、メモに「12ヶ月点検」のように書き添えられます。登録した期間はその車両の予約を受け付けなくなるため、点検の日に予約が入る事故を止められます。予約の重複そのものを防ぐ考え方は ダブルブッキング防止策 にまとめています。
ここで正確に書いておくと、RentGoにあるのは入庫予定を押さえる機能で、点検期日を自動で検知して通知する機能や、整備の記録簿そのものを保管する機能ではありません。期日の管理と記録の保存は、整備管理者や委託先の工場と決めた方法で行い、そこで決まった入庫予定を予約と同じ画面に置く、という分担になります。
点検で貸せない日を、予約表の中に置く
RentGoなら、車検・点検・修理の入庫予定をガントチャートに登録するだけで、その期間は予約を受け付けません。初期費用0円・月額4,980円〜・30日間無料トライアルで試せます。
無料で始める無料トライアルは開始時にクレジットカードの登録が必要で、期間終了後は自動的に有料プランへ移行します。
8. よくある質問
レンタカーは何台から整備管理者が必要ですか。
使用の本拠ごとに、乗車定員11人以上のバスは1台以上、車両総重量8トン以上の大型トラック等は5台以上、その他の自動車は10台以上で選任が必要です。乗用車のみで運営している場合は10台目が判定ラインになります。
レンタカーの法定点検は何ヶ月ごとですか。
レンタカーの乗用車は6ヶ月ごと(24項目)と12ヶ月ごと(86項目)です。レンタカーの乗用車以外は3ヶ月ごと(51項目)と12ヶ月ごと(101項目)で、自家用乗用車の1年ごと・2年ごとより短い間隔になります。
整備管理者は外部に委託できますか。
レンタカーは自家用自動車のため外部委託が認められています。選任届に加えて委託先の同意書と委託契約書の写しが必要です。緑ナンバーの事業用自動車の整備管理者は原則として外部委託できません。
点検整備記録簿はどれくらい保存しますか。
国土交通省の案内では、3ヶ月点検・6ヶ月点検の対象車は1年、1年ごとの点検が対象の車は2年とされています。レンタカーの乗用車は6ヶ月点検の対象なので1年が目安です。貸渡簿は別に、貸渡しの終了日から2年以上の保存が許可条件になっています。
9. まとめ
レンタカーの整備管理は、覚えることが多いように見えて、押さえる数字は多くありません。整備管理者は使用の本拠ごとに乗用車なら10台以上で選任が必要、選任したら15日以内に届出。点検はレンタカーの乗用車で6ヶ月ごとと12ヶ月ごと、乗用車以外は3ヶ月ごとと12ヶ月ごと。記録は点検整備記録簿が1年、貸渡簿が2年以上。この4つが土台です。
社内に有資格者がいないことは、増車を止める理由になりません。自家用であるレンタカーは整備管理者を外部委託でき、委託先の同意書と契約書の写しを添えれば届出は通ります。整備作業も、認証工場に任せたうえで日々の管理を自社で持つ形が現実的です。
残るのは、決めた予定を実行できるかどうかです。点検の入庫予定が予約表の外にある限り、繁忙期に「その日は貸してしまった」が起きます。整備の体制を整える作業の最後の一歩は、入庫予定を予約と同じ場所に置くことだと考えてください。
本記事は2026年8月時点で公開されている国土交通省「点検整備の種類」、北海道運輸局「整備管理者制度の概要」、近畿運輸局滋賀運輸支局公示「自家用自動車の有償貸渡しの許可の基準について」(令和4年6月1日施行)などの公表資料をもとに構成しています。許可条件の細目や整備管理者研修の運用は運輸局・運輸支局によって異なる場合があり、改正されることもあります。実際の選任・届出・点検計画にあたっては、管轄の運輸支局が公表する最新の案内をご確認ください。